エスプレッソの“顔”、クレマの正体―メリット・デメリットと最近のクレマ不要論【エスプレッソとクレマ 第2話】

真上から見たエスプレッソのカップとコーヒー豆、ウッドテーブルの上の一杯 未分類

前回は、エスプレッソの基本について紹介しました(第1話はこちらから)。今回はエスプレッソを語るうえで欠かせない、表面を覆うきめ細かい泡「クレマ」について、その正体からメリット・デメリット、そして近年業界で聴かれるようになった“クレマ不要論”まで整理していきます。

そもそもクレマとは何か

クレマの正体は、コーヒー豆に含まれる二酸化炭素と、コーヒーの油分・タンパク質が、高圧・高温の抽出によって乳化したものです。エスプレッソマシンの約9気圧という圧力での短時間抽出によって生まれる現象で、重力だけで抽出するドリップコーヒーには見られない、エスプレッソ特有のものです。

エスプレッソマシンからカップに注がれるコーヒーと立ち上る湯気

クレマがもたらす2つのメリット

香りを閉じ込め、飲む瞬間に解放する

泡が膜として機能し、揮発性の高い香り成分をカップの中に保持します。飲む際にこの泡が破れることで、香りがふわっと解放されるのです。

シルキーな口当たりとコク

空気と微細な油分が多く含まれているため、液体に加わることで口当たりが滑らかになり、まろやかなコクが生まれます。きめ細かく厚みのあるクレマは、新鮮な豆を使い、挽き目・タンピング・湯温・圧力といった条件が適切に整った状態で抽出されたことの、ひとつの目安ともされてきました。

見落とされがちな2つのデメリット

苦味・渋みの原因になりやすい

クレマにはコーヒー豆のオイルや微粉、抽出初期に出やすい成分が凝縮されています。深煎りの豆や抽出過剰の場合、これが苦味や渋みとして強く出てしまうことがあります。

温度が下がりやすい

泡の層がカップ表面を覆うため、実は熱が逃げやすくなるという、意外な一面もあります。

クレマのメリットとデメリットを整理した図解

なぜ近年「クレマは絶対ではない」と言われ始めているのか

近年、クレマの量と豆の品質が必ずしも一致しないということが広く理解されるようになってきました。クレマは主にロブスタ種や、深煎りで油分が多く出た豆、あるいは挽いてから時間が経ちすぎていない豆でも比較的出やすく、量の多さが必ずしも品質の高さを示すわけではないのです。実際、高品質なアラビカ種の浅煎りは、味わいとしては「クリアで華やか」であっても、クレマ自体は薄くなる傾向があります。

スペシャルティコーヒーの世界では、豆そのものが持つ酸味や香りのクリーンさを重視する潮流が強まり、雑味の原因にもなり得るクレマは、以前ほど手放しで評価されなくなりました。本場イタリアでも、飲む直前にスプーンでクレマを軽く混ぜたり、あえて取り除いたりする飲み方をする人がいるほどです。

つまり“クレマ不要論”の実質は、「クレマそのものが不要」というよりも、「量や見た目だけで品質を判断することへの異議」だと捉えるのが実態に近いでしょう。

クレマは絶対ではないと言われる理由を整理した図解

まとめ:クレマはエスプレッソの「らしさ」を体現するもの

評価の軸は時代とともに変わってきましたが、クレマが、味覚だけでなく視覚や嗅覚も含めてエスプレッソという体験をひとつの様式として成立させてきた、「らしさ」の象徴であるという位置づけは、今も変わっていません。

自家焙煎の立場から見ても、クレマの出方は焙煎度合いや豆の状態を映す鏡のひとつ。次回・最終話では、そもそもコーヒーの色や味わいがどんな成分によって決まっているのか、クレマの奥にある「成分科学」の視点からさらに掘り下げます。

(本記事はnoteに掲載した記事を、当ブログ向けに再構成・加筆したものです)

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