連載最終話となる今回は、少し視点を変えて、コーヒーの色や味わいそのものを決めている「成分」の話をします。前回(第2話)取り上げたクレマも、実はこの成分たちが土台になって生まれる現象です。
そもそも、なぜコーヒーは黒いのか
収穫直後のコーヒー生豆は、緑がかった黄色をしています。焙煎の過程で「メイラード反応」と「カラメル化」という、2つの化学反応が進み、褐色の色素成分「メラノイジン」が大量に生成されます。これがお湯で抽出されることで、私たちが普段目にするあの黒く濃い茶色になるのです。

一杯の味を作る5つの要素
コーヒーの味わいは、大きく次の5つの要素で構成されています。
・酸味:フルーツのようなさわやかさ
・苦味:重厚な後味
・甘味:雑味のない自然な甘さ
・コク・ボディ:口に含んだときの重みやとろみ
・フレーバー:ナッツやチョコレートなどの香りの印象
それぞれを特徴づける、代表的な物質たち
酸味の正体はクエン酸、リンゴ酸、キナ酸、クロロゲン酸といった有機酸です。苦味はカフェインやクロロゲン酸ラクトン、フェニルインダンなどが担っています。甘味はショ糖とそのカラメル化生成物、コク・ボディはコーヒーオイルや多糖類、メラノイジンがつくっています。前回紹介した「クレマ」のコクや口当たりの正体も、このコーヒーオイルとメラノイジンが深く関わっています。フレーバーを作るのはピラジン類やフラン類、チオール類、アルデヒド類など数百種類にも及びます。
焙煎が進むと、何が増えて何が減るのか

浅煎りでは酸味とフレーバーが際立ち、中煎りでは甘みと香ばしさが調和します。深煎りになると苦味物質が増加する一方で、有機酸や糖分は減少し、オイルが増えます。なお、カフェインは焙煎による変化が比較的少ない成分です。
これを前回のクレマの話に当てはめると、「浅煎りはクリアだがクレマは薄め、深煎りはコクがありクレマも豊かだがオイルが表に出やすい」という第2話の内容も、こうした成分の変化から説明がつきます。

浅煎り人気の理由も、成分で説明できる
近年人気の浅煎りは、有機酸や揮発性の香り成分が熱で壊されずに残るため、産地ごとの個性をダイレクトに味わえ、クリアな口当たりが得られます。
連載を振り返って
第1話ではエスプレッソそのものの基礎と歴史、第2話ではその“顔”であるクレマのメリット・デメリット、そして今回はその奥にある成分科学まで、3回にわたって掘り下げてきました。焙煎度合いひとつで味わいの設計図がまったく変わってくることが、少しでも伝われば嬉しいです。
pluubi roasteryでは、こうした成分や焙煎度の違いを踏まえながら、日々の自家焙煎に向き合っています。気になる焙煎度や豆選びがあれば、BASEの商品ページやお問い合わせからお気軽にどうぞ。
(本記事はnoteに掲載した記事を、当ブログ向けに再構成・加筆したものです)


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